お酒とお酒造りの話
何も知らなくてもお酒は楽しめます。でも中には「あまりに多くのお酒があって何が何だか分からない」「あれとこれはどう違うの?」という方もおられます。そんな方のためのコーナーです。
ここではお酒の造り方を知ってもらいお酒の全体像をイメージしてもらえれば、個々のお酒を分類して覚える役に立つと思います。
酵母(こうぼ)
全てのお酒に含まれるアルコールは、酵母という微生物のアルコール発酵によりつくられます。
アルコール発酵とは酵母が糖類(お酒造りの場合は甘い液体)を食べ、アルコールと炭酸ガスを排出することをいいます。ビールやスパークリングワインから出る泡はこの時造られた炭酸ガスです。
そして芳香成分であるエステルや他の有機物もこの時造られ、それがお酒の個性にも繋がります。
製造方法による分類
お酒は製造方法により大きく次の2つに分類することができます。
醸造酒(じょうぞうしゅ)
糖液を酵母でアルコール発酵させて造ったお酒。アルコール以外の有機物も多く含まれ、保存には温度や湿度に気を使う,また長期保存に向かなっかたりします。
代表的なお酒 ワイン ・ 日本酒 ・ ビール ・ スパークリングワイン
醸造酒 フリー百科事典「ウィキペディア」
蒸留酒(じょうりゅうしゅ)
糖液を酵母でアルコール発酵させて造った液体またはお酒を、更に蒸留してアルコール度数を上げて造ったお酒。蒸留しているためアルコール以外の有機物が少なく、ビン詰された物は長期保存しても品質変化が少ない。
代表的なお酒 ウイスキー ・ブランデー ・ ジン ・ ウォッカ ・ ラム ・ テキーラ ・ 焼酎
蒸留酒 フリー百科事典「ウィキペディア」
原料による違い
主原料の違いでお酒造りの第一歩が大きく違ってきます。
原料が果実よる場合
原料が果実やサトウキビなど、最初から甘い場合はその絞り汁に酵母を加えるだけで、アルコール発酵してお酒ができます。
代表的なお酒は、ブドウから造るワインやスパークリングワイン、リンゴから造るアップルワインやシールドでこれは醸造酒です。そこからもう一手間かけ、ワインやアップルワインを蒸留して造るブランデーは蒸留酒です。
また最初から汁の甘いサトウキビや廃蜜糖が原料のラムや、リュウゼツランが原料のテキーラもアルコール発酵のあと、蒸留するので蒸留酒となります。
原料が穀物の場合
原料が麦・米・トウモロコシ・いもなど穀物の場合は、ほとんど糖分が含まれなかったり含まれていても糖度が低かったりで、そのままではアルコール発酵することができません。
そこで穀物に大量に含まれているでん粉を、酵素の力を借りて糖化させてアルコール発酵に必要な糖分を得ます。
簡単に言ってしまうと甘くない物を、酵素の力で甘くしちゃうってことです。
次に代表的な2例を。
・ 麦芽をつかっての糖化の例
大麦麦芽(発芽したばかりの大麦)には活性化したアミラーゼと呼ばれる糖化酵素が大量に含まれていて、麦芽だけあるいは麦芽と他の穀物に水分を加え、その酵素の力を借りてでん粉を糖化させる方法。糖化したらあとは酵母を入れアルコール発酵させてお酒を作ります。
ちなみにこの方法で造った糖分は麦芽糖と呼ばれ水飴の原料になったりします。
この方法で造る代表的なお酒は、ビールとウイスキーです。乱暴な言い方をすれば、麦芽汁から造ったお酒にホップ等で味や香り付けするとビール。蒸留して樽に詰めて何年か寝かせるとウイスキーです。
・ 麹をつかっての糖化の例
麹とはコウジカビと呼ばれるカビで、このカビに含まれるアミラーゼ等の酵素で穀物を分解・糖化させる方法。麹には味噌や醤油造りに合うもの、日本酒造りに合うもの、焼酎造りにあうものなど多くの種類があります。
日本酒はお米のでん粉を麹の酵素で糖化させアルコール発酵させたもの。焼酎は米・芋・麦・そば等を麹の酵素で糖化させ、アルコール発酵させたのち蒸留したものです。
同じ醸造酒でも穀物から造る日本酒やビールは、ワインやスパークリングワインに比べアルコール発酵するまでに遥かに手間がかかっています。
最近、日本酒を「ワインのようだ」と表現することがあります。ほとんどが褒め言葉のつもりでしょうが、日本酒造りをしている方達からいわせれば「冗談じゃないブドウを搾ってタンクに貯蔵するだけのワインと同じにしないでくれ」と思っているはずです。まあワインにはワインの難しさがあって、どちらが上というわけではありませんが。
個々のお酒造りには、温度管理や蒸したり加水したり濾過したりと複雑な工程が沢山あるのですが、分かりやすくするためここではすべてカットして大雑把に説明しています。
きちんと伝わっているか不安ですが、お酒が酵母という微生物と酵素の力を借りて造られていることと、醸造酒と蒸留酒の違いが理解できればと思います。
他の分類およびカテゴリー
リキュール
蒸留酒に果汁やシロップ、ハーブなどさまざまな副材料を加えて造った混成酒です。
そのまま飲んだりすることもありますが、何かで割ってカクテルして飲んだりします。また洋菓子作りの材料としても多く用いられます。
カンパリ ・ カルーア ・コワントロー ・ アマレット ・ クレーム ド カシス など
混成酒
醸造・蒸留して造ったお酒に他のお酒や副材料を加えて造ったお酒。
リキュール ・ ベルモット ・ シェリー酒 ・ 梅酒 ・ 味醂 など
スピリッツ
日本の酒税法では、焼酎、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール以外の蒸留酒でエキス分2%未満のものを指します。また蒸留酒をそう呼ぶこともあります。
ラム ・ ジン ・ ウォッカ ・ テキーラ など